文を敲く

読書記録とその他雑記。

クリシェと向き合う -「紋切型社会」

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

「育ててくれてありがとう」「全米が泣いた*1」といった紋切型の表現は今日もどこかで使われている。本書はこれらの紋切型表現から日本社会の現在を見つめ批評したものである。

紋切り型は何も考えないでもよいので楽ではある。気が付けば「グローバル」や「イノベーション」も手垢のついた表現となり、筆者が用いる「反知性主義」といった表現もたちまちクリシェとなった。空しさもいくらか感じずにはいられない。

なお私は本書が出版される前年に【これはひどい】紋切り型表現の氾濫でネットがヤバイ【全ネットイナゴ必読】という記事を書いていた。観点は似ていたのでもうすこしスケールを広げておけばどこかの出版社から書籍化の声がかかったのだろうかと妄想が広がる。

*1:余談だが「全英が泣いた」「全豪が泣いた」は使われても「全印が泣いた」が大っぴらに使われることは無いだろう。音読すると駄洒落になってしまうからだ。