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読書記録とその他雑記。

奇書 -「錯乱のニューヨーク」

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

表紙に使われているイラストが目を引く。ホテルの一室を描いたものだが、よく見ると寝ているのは人間ではなく摩天楼だ。これほど本書にぴったりなイラストがあったものだと感心したくなる。本編でもこの種の目を引く図版が多数収録されている。添えられているキャプションの文言も味わい深い。

本書はニューヨークの歴史を紐解きながら、マンハッタンに摩天楼が立ち並ぶに至った経緯と発展について叙述した本である。以前読んだ「通天閣 新・日本資本主義発達史」という本を思い出させる緻密な叙述だ。一見すると変わったエピソードの集積なのだが、著者はそのエピソードの集積から深層を巧みに読み取っていく。こんな本を著者は1970年代に書いていたというのだから凄い。