文を敲く

読書記録とその他雑記。

二十一世紀の「故郷」 - 「中国はここにある」

たまたま本書が激賞されているツイートを見かけて手に取った次第である。期待通りの面白さであった。

学者として大学に籍を置く著者が久しぶりに故郷の農村を訪れ、その情景を描く。魯迅の『故郷』のような趣向である。しかし、本書に描かれた二十一世紀の中国の農村の人間模様が魯迅の描いた頃からそこまで変わっていない(貧困の情景が欧米化していない)ことには驚かずにはいらなかった。

魯迅のころと比べれば確かに中国の農村の暮らしぶりは大きく改善しているが、それでもなお問題は山積みなのである。著者は地方行政の責任者にも取材して中国共産党の恵農対策*1を丁寧に紹介している。この部分に関しては党の広報と一刀両断することもできないこともないが、切り捨てるには惜しい内容だとも思う。

*1:農村に対する各種優遇政策

驚き -「トマト缶の黒い真実」

スーパーマーケットや輸入食料品店に山積みにして売られることが多いトマト缶。手頃な価格なのでこれまで何度か買ったことがあるが、本書はこの「手ごろな価格」のカラクリを詳らかにしたノンフィクションである。トマト缶がまさかここまで国際分業で作られているとは思わなかったので驚きの連続であった。もう以前とは同じような感覚でトマト缶を買うことはできなくなる。

「トマト缶」という一見すると地味な題材にもかかわらず、本書は異様なまでにスリリングな出来となっている。著者の取材力と構成力に感嘆するのみであった。

「さいはての中国」

ここしばらく中国への関心興味が尽きないため、中国関係の書籍を読む頻度が増えている。前回は歴史書だったが、本書は中国の知られざる現在を取材したノンフィクションである。連載が行われていたというSAPIOといえば勇ましい文言が並びがちなイメージがあるが、本書はその手の文言は極力避けて書かれていたので私にとっては読みやすかった*1

中国国内にアフリカ人街ができているという話は本書で初めて知った。「世界の工場」ゆえ当然のことであるが、その定着度合いに驚きがあった。

*1:とはいえ本の帯には「行ってはいけない」などと書かれていたりするので掲載雑誌のカラーに少なからず引きずられているとも思う。