文を敲く

読書記録とその他雑記。

制度史 -「日本社会のしくみ」

「終身雇用」や「年功序列」といった<日本的>雇用体系の誕生と発展を膨大な資料を基に叙述した本である。新書3冊分ぐらいの分量*1はあるが、著者は人文系書籍界の京極夏彦のような存在*2なので平常運転といってもよいだろう。

本書では<日本的>雇用体系の問題点を提示するだけで解決策は示さない。著者は雇用の諸問題についての解決の糸口は見つけていないのかもしれない。

*1:講談社現代新書は他社と比べると大部の新書が比較的多いような気がする

*2:刊行した著作はだいたい分厚い

SNSという名の戦場-「「いいね!」戦争」

SNSがいかにしてプロパガンダや論争が飛び交う「戦場」となったのか分析した書籍である。ソーシャルメディア含むウェブは誕生からほぼ最近まで楽観的に語られることが多かったが*1、そのような時代は終わりを告げたことを様々なエピソードから著者は示している。

SNSにおける過激な発言は承認要求を得るため行われるといわれてきたが、実際には承認以外にもさまざまな利益が得られてしまうのだ(例:アメリカのトランプ大統領)。そしてこの「戦場」は知名度さえあれば容易に一攫千金を狙えるのでしばらくは活況を呈するだろう。

*1:依存の危険性を指摘する書籍は従前より出版されていたが小さな声であった

きらめく引用 -「ウォークス 歩くことの精神史」

古今東西の文献を自由自在に引用しつつ、普段何気なく実践している「歩行」のもつ意味を考察した刺激的な一冊。訳者あとがきによれば著者は「災害ユートピア」や今ひそかに話題の「マンスプレイニング」に関する著作も出していて、それぞれ話題になったらしい。テーマの選定力も秀逸としか言いようがない。

人文系書籍ではあるが、建築系の学生にも薦めたい。飛ばし読みでもいろいろと知見が得られると思われる。