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読書記録とその他雑記。

時代精神 -「負け犬の遠吠え」

負け犬の遠吠え (講談社文庫)

負け犬の遠吠え (講談社文庫)

ベストセラーとなる本は年に二十冊ぐらいは現れる。しかし流行語になるレベルの本はせいぜい年に一冊現れるかどうかになってくる。本書は書名が流行語にまで上り詰めたゼロ年代前半を代表するエッセイである。軽妙な自虐ネタに笑いつつも、独身ならふと我が身を振り返ってしまう冴えがある。

キャリアがあっても未婚なら「負け犬」と著者自身の経験をもとに断定した本書は議論を巻き起こしたが、その後の「婚活」「妊活」の隆盛を考えると本書の果たした役割は大きい。「負け犬」という概念が出来たことによって流行語が出来ていったとも思う。

今振り返ると、自虐ネタが通用するという意味では幸せな時代だったともいえる。その後は「草食系男子」が話題になったぐらいで「希望は戦争」「日本死ね」と社会系の流行語からはユーモアの要素が薄くなっているのではないか。