萌芽 - 「東京漂流」
1980年代前半の日本の世相を書きとったノンフィクションである。インドを長く放浪していた著者にとって潔癖日本・コマーシャリズム日本は違和感しかなかった。著者は大衆が突如として興味を持ちだした「日本国憲法」「反核運動」「ボランティア活動」とその背景にある「絶対善」に対しての複雑な気持ち*1を綴り、サントリーの広告パロディ*2を雑誌の連載に乗せようとして「編集」させられた経緯を記す。
本書の単行本が出版されて30余年が経とうかとしている。この間、中産階級はしぼみ、それと歩調を合わせるかのように「日本国憲法」「反核運動」「ボランティア活動」も往時の勢いを失っていった。一方で潔癖症と絶対善は勢いを増し続けた。その差は一体何だったのか。