文を敲く

読書記録とその他雑記。

最後まで読んでようやく題名の意味を知る -「同時代ゲーム」

同時代ゲーム (新潮文庫)

同時代ゲーム (新潮文庫)

次々に移る舞台。次々に移る時間。次々に登場する異様な名称の登場人物。そして大江健三郎特有の複雑な文体。なかなか読み進めていくことが出来なかった。間違いなく読者を選ぶ作品だ。とはいえ慣れるとその物語に引き込まれていったのもまた事実だ。最後になってようやく題名の意味が明らかになって、そのテーマの壮大さに改めて圧倒された。

本書は「私」から「妹」への手紙、という形で物語が展開されているが、この「私」は相当偏執的である。生まれ育った「村=国家=小宇宙」の歴史が主題ではあるが「妹のバター色の尻」への言及の多さが妙に印象に残っている。