文を敲く

読書記録とその他雑記。

なぜ生きる -「母の遺産 - 新聞小説(上) 」

著者が出した「私小説」の実質的な続編である。物語の舞台や登場人物の名前は多少異なるがほぼそのまま出てきている。しかし浮気していたり耄碌していたりしていて何とも時間の経過を強烈に感じずにはいられない。母親の介護でノイローゼになっていている様子はなんとも生々しく、読んでいるだけでこちらまでうんざりしてくる。

だが日本人の大多数はいずれ同じ道をたどることになるのだ。長く生きることが寿でもなんでもなくなってしまった21世紀日本社会。悲しい。

ここまで書くと重々しい内容かのように思えるが、母親が死んで「きょう、ママンが死んだ」と主人公がつぶやくなど意外と笑いどころが少なくない。実は読者へのサービス精神満載だからこそ「新聞小説」なのだろう。