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公案入門 - 「笑う禅僧」

笑う禅僧─ 「公案」と悟り (講談社現代新書)

笑う禅僧─ 「公案」と悟り (講談社現代新書)

普段からいろいろ読書感想文らしきものを書いているので「秋の夜長は読書とブログ」というお題にも参加してみる。今回取り上げた本書は禅の修行で用いられる問答の問題集である「公案」についてやさしい筆致で紹介したものだ。紹介されている公案にはシュールなコントのようなものもあって面白い。

禅では徹底的な「無」を目指す。そのため座禅で心を無にしようとする人が多いがこれは意識の切れ目に過ぎず、禅における「無」とは異なるものだという記述にまず驚く。本書によれば一息ごとに「無」「無」と繰り返して心の中を無で溢れさせるほうがよいそうだ。そうすることで「無」から意味が無くなり相対的な無から絶対的な無へと跳躍できるという。何となくゲシュタルト崩壊に近いものを感じた。

禅の修行では無を無意味なものにするため拶処と言う問答も行うらしい。「無字をつまんでみろ」「無字を無数に分けろ」といった問いが次々に繰り出されるという。常識では答えようがない。公案の多くも常識では答えようが無い。そもそも常識に執着している限りは悟りの境地には至らないことを考えれば、当然のことなのだろう。