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読書記録とその他雑記。

内田氏? -「世直し教養論」

世直し教養論 (ちくま新書)

世直し教養論 (ちくま新書)

人文学者のエッセイである。「教養」「大学崩壊」「ポストモダン」「呼吸法」といった話が出てきて一見すると内田樹の文章を髣髴とさせるものがある。同業者だからか。とはいえ、細部をきちんと読めば著者と内田氏はおそらく異なる意見の持ち主であることは分かる。

個人的に面白く読めたのは「補章 日本流ポストモダン・リベラルの危うさ」である。中身はおおむね東浩紀批評である。ゼロ年代における東浩紀の影響力とその影響力への無自覚さや政治的スタンスのまずさが綴られていて興味深く読めた*1

紙幅の都合とは思われるが注釈は少ない。例えば「「はてな」の左翼親和的と思われるブログ執筆者が「南京虐殺否定問題」でまず痛烈な批判記事を投稿し(p.265)」といった記述があるが「痛烈な批判記事のURL」が見当たらない。痒い所に手が届かないのが惜しい。

*1:そして、10年代の東浩紀の主要な活躍といえば「原発観光地化計画」「一般意思2.0」が個人的には思い出される。サブカルから政治へのシフトチェンジが行われた一方で、著者の危惧した政治的スタンスのまずさに大きな変化はない