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読書記録とその他雑記。

近代は終わったけれども - 「ヨーロッパ「近代」の終焉」

ヨーロッパ「近代」の終焉 (講談社現代新書)

ヨーロッパ「近代」の終焉 (講談社現代新書)

当たり前のように使われている「古代」「中世」「近代」「現代」という時代区分が、実はヨーロッパの歴史観の産物に過ぎないことを説明した上で、その「近代」が世界にどのような影響を与え、なぜ終わりへと向かっていったのかが丁寧に解説されている好著である。高校生の間に読んでおきたかった本だ。

なお本書はソ連が崩壊して間もない1992年2月に刊行されている。東欧の民主化ソ連崩壊でまだ多幸感があったものの、湾岸戦争で新たな不安の種が蒔かれはじめた頃合である。民族対立や環境問題への言及もあるがおおむね楽観的な記述*1が続く。本書が刊行された時点ではユーゴスラビアの内戦は始まったばかりで、アルカイダもまだ無名に等しい組織だった。

「近代」は人間を行き着くところまで傲慢にした。その傲慢さがアウシュビッツの悲劇や環境破壊を招いたのだ。しかし日本では再び「傲慢」が大手を振るって歩きだそうとしているような有様だ。90年代はまだ傲慢な漫画家でも「ゴーマンかましてよかですか」と許諾を求めなければいけなかった。

*1:のように今では見えてしまう