文を敲く

読書記録とその他雑記。

ふわっとした何か - 「現実脱出論」

現実脱出論 (講談社現代新書)

現実脱出論 (講談社現代新書)

「論」とは銘打たれてはいるが、系統立てて何かが語られているという訳ではない。著者の体験談や思いがふわっと漂っているような本である。ネームバリューがなければ新書としての刊行は難しかったのではないかとも思う。

著者には「現実」を脱出しようと試みたり夢想したりしたことを公言する人にありがちな<自己への冷めた視線>は見られない。しかしスピリチュアルな解決策を提示するという訳でもない。「死にたいと思うのは脳の誤作動のせいである」という家訓を作っている位だからだ。ふわっとはしているが著者が真摯に考えた物事が詰まっていると思う。