文を敲く

読書記録とその他雑記。

大き過ぎた問い - 「儀礼としての消費」

儀礼としての消費 財と消費の経済人類学 (講談社学術文庫)

儀礼としての消費 財と消費の経済人類学 (講談社学術文庫)

「経済人類学」というあまり耳慣れない学問から経済について考察した本である。全体的に論理構成が分かりにくく、明快な結論もない。あくまでも研究者として学問に誠実であろうした結果なのだと信じたい。「第一章 人はなぜ財をもとめるか」にいたってはこれといった回答も出されず投げ出されてしまっている。問いがあまりに根本的で、かつ大き過ぎたのだと思われる。

富裕層が社交に熱心な理由についての記述などはいろいろと考えさせられる。「貧しかったけれども助け合った云々」という美談をよく聞くが、本書を読んでいると富裕層の方が助け合いに熱心で、貧乏人は助け合っているつもりで実は足を引っ張り合っているだけのように思えてきたのだった。