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論点満載 -「反逆の神話」

反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか

反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか

分量の多い本だが「カウンターカルチャーと商業主義」「ヒップスター」「左翼の迷走」「人口の一極集中」「画一的な郊外」「「消費社会批判」批判」など取り上げられている論点がどれも魅力的かつ丁寧に論じられていて、たいへん刺激の多い一冊だった。

消費社会批判の教祖ともいえるボードリヤールを19世紀末の学者であるヴェヴレンの理論で批判していた点が何とも興味深かった。そして「囚人のジレンマ」から消費社会の問題を読み解いている*1。規制によって社会を改善していくという著者の立ち位置は何となくピケティに近い*2

しかし、原著が10年前に書かれたとは到底思えない。もし本書が原著出版とほぼ同時に日本でも出版されていたら、日本における結構な量の不毛な議論にも早々と決着がつけられていたのではないか。そんなことさえ思わせる出来だ。

*1:最近読んだ専門書に結構な割合で「囚人のジレンマ」が使われていて戸惑いもある。

*2:最近めっきり耳にしなくなった。人の噂も七十五日か。