文を敲く

読書記録とその他雑記。

純愛の困難性 - 「ぼくは明日、昨日の君とデートする」

純愛には「引き裂かれる二人」という筋書きが欠かせない。かつてはそのお膳立てを「家柄」なり「身分」なり「不治の病」が行ってくれたが、喜ぶべきか悲しむべきかこれら「恋の障害」は現代日本社会からはおおむね消え去ってしまった。では、どのように「純愛」を表現するか。

本書で使われた「恋の障害」を読者が実体験することはまず無い。しかしこの「恋の障害」はライトノベルをはじめとする日本のポピュラーカルチャーに親しんできた人にとっては馴染み深いものなので、特に違和感なく受け入れることは出来るとは思う。

速読したわけではないが1時間もかからず読了。会話主体で凝った表現が文章にほとんどないからだろう*1。個人的には「1時間もかからず読み終えてしまう本」ということにとりわけ感慨深いものがあった。

*1:個人的には「なんとなく、クリスタル」のような批評的な註を入れたいところだ。ほとんど実在の名称を使っているにもかかわらず主人公が通う大学だけはなぜか仮名である点などツッコミを入れたい部分が多い