上海旅行
書物の中の中国に飽き足らなくなってきたので、思い切って二泊三日で上海を旅行した。二日目に朱家角古鎮を訪れる。上海都心部から地下鉄で数十分で行ける水郷(日本でいえば倉敷美観地区)だ。穏やかな春の陽気の中、中国の近世の町並みを遊覧船から眺めて楽しむ。日本より空が広い気がした。
古鎮を楽しんだ後は都心へ戻る。大型書店として知られる上海書城にて日没までの時間をつぶしてから、歩いて外灘へ。
新都心側の超高層ビルは単なるライトアップに留まらず、一面に「我♡上海」や社会主義核心価値観などのメッセージを表示していた。
私は新都心より外灘の夜景のほうが好きだ。20世紀前半に建てられた近代建築ビル群の夜景を楽しめる場所は少ない。
二十一世紀の「故郷」 - 「中国はここにある」
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学者として大学に籍を置く著者が久しぶりに故郷の農村を訪れ、その情景を描く。魯迅の『故郷』のような趣向である。しかし、本書に描かれた二十一世紀の中国の農村の人間模様が魯迅の描いた頃からそこまで変わっていない(貧困の情景が欧米化していない)ことには驚かずにはいらなかった。
魯迅のころと比べれば確かに中国の農村の暮らしぶりは大きく改善しているが、それでもなお問題は山積みなのである。著者は地方行政の責任者にも取材して中国共産党の恵農対策*1を丁寧に紹介している。この部分に関しては党の広報と一刀両断することもできないこともないが、切り捨てるには惜しい内容だとも思う。
驚き -「トマト缶の黒い真実」
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「トマト缶」という一見すると地味な題材にもかかわらず、本書は異様なまでにスリリングな出来となっている。著者の取材力と構成力に感嘆するのみであった。