文を敲く

読書記録とその他雑記。

「さいはての中国」

ここしばらく中国への関心興味が尽きないため、中国関係の書籍を読む頻度が増えている。前回は歴史書だったが、本書は中国の知られざる現在を取材したノンフィクションである。連載が行われていたというSAPIOといえば勇ましい文言が並びがちなイメージがあるが、本書はその手の文言は極力避けて書かれていたので私にとっては読みやすかった*1

中国国内にアフリカ人街ができているという話は本書で初めて知った。「世界の工場」ゆえ当然のことであるが、その定着度合いに驚きがあった。

*1:とはいえ本の帯には「行ってはいけない」などと書かれていたりするので掲載雑誌のカラーに少なからず引きずられているとも思う。

「中国史」

国史という大河を東洋学の泰斗が悠々と叙述した通史である。古代から現代までの大枠をとらえるには最適だと思われる。

ときどき「処理」の変換ミスで「胥吏」という言葉が出てくるが本書によってその指し示すもののイメージをようやくつかむことができた。かつての王朝では末端の官吏は請負だったらしい。ある種の「小さな政府」ではあるがそれが賄賂の横行につながった訳でもある。読んでいるうちにいろいろ連想が深まった。

堅実 -「チベット仏教入門」

チベット仏教の入門書である。概してチベット仏教関連本は『虹の階梯』*1をはじめとして神秘性が押し出されがちである。一方、本書はチベット仏教の思想の特徴を述べるにあたってこの神秘性を押し出さず、代わりに仏教の受容史や日本の大乗系仏教との共通点などに触れる。チベットに留まらない仏教入門本になっていることが本書の魅力だ。理論と実践のバランスもよいので折に触れて再読したい一冊である。

*1:本書の補章において当該書籍および著者に対して丁寧な批判が行われている