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「木曽路はすべて山の中である」だけで満足するのは勿体ない - 「夜明け前 第一部(上)」

夜明け前 第1部(上) (岩波文庫)

夜明け前 第1部(上) (岩波文庫)

以前「第二部」だけ読んでその趣向に感動したが、そのときは第一部を読まずにあらすじで済ましていたので、今回思い切って読み始めることにした。

「黒船」の到来によって大きく変化し始めた日本社会。その変化は江戸だけではなく主人公が住む馬籠にも到来する。今こそ世の中を善き方向へと変える好機と思いながらも、日々の仕事に追われて思い切った行動はできない傍観者のような主人公の姿には共感を持てる。

ちなみに島崎藤村といえば夏目漱石と同じ時期に活躍した明治の文豪のイメージが強いが、夜明け前が執筆されたのは昭和初期で意外と新しい。