文を敲く

読書記録とその他雑記。

渋め -「誰か Somebody」

誰か―Somebody (文春文庫)

誰か―Somebody (文春文庫)

前々からタイトルが気になっていた社会派ミステリーである。派手なトリックや推理は無い。舞台設定も渋めの展開であるが引き込まれる文章である。しかし謎は事件から思わぬところへと広がっていくので面白い。

閑話休題、本作の主人公の妻の名前は「菜穂子」である。生まれつき体が弱いお嬢様という設定だ。「菜穂子」といえば宮崎駿の「風立ちぬ*1」のヒロインの名前でもある。こちらのヒロインはサナトリウムに暮らす令嬢である。そして日本を代表する児童文学作家の上橋菜穂子。何というべきか「菜穂子」という名から連想されるイメージが固定化されつつあるような気がした。

*1:ちなみに堀辰雄の「風立ちぬ」のヒロインの名前は菜穂子ではなく節子だ。節子といえば「火垂るの墓」のイメージが強い。それゆえ堀辰雄の別の小説「菜穂子」から名前を拝借したのだろうか。