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表裏 - 「反知性主義」

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)

「論壇」ではちょっとした流行語となっている「反知性主義」の定義を語源であるアメリカの宗教史から紐解いた本である。

本書はプロローグから面白い。アメリカの大統領はスピーチできまって"God bless America."(アメリカに神の祝福あれ) で締めくくるが、著者によればこの言葉には「われわれは神の約束を果たしたので、今度は神が約束を守る番である」といった思想が根底にあるというのだ。こんな興味深いエピソードがプロローグから惜しみなく紹介されているのだ。

著者によれば反知性主義の母体には「リバイバル」とよばれるキリスト教の宗教運動があるという。そのためこの宗教運動の手法や思想が詳しく語られているのだが、幸福の科学との類似点が多いのが興味深かった。

「19世紀アメリカのキリスト教伝道集会では、集会をきっかけに回心した人の集計分析を始めた」というエピソードが個人的に最大の収穫だ。長らく疑問だった「コンバーション」のミッシングリンクを発見できたからだ。「コンバーション」はウェブ広告の業界用語で「最終的な成果」という意味を持つ言葉であるが、「回心」という宗教的な意味もある言葉でもある。