文を敲く

読書記録とその他雑記。

シルエット - 「無能の人・日の戯れ」

無能の人・日の戯れ (新潮文庫)

無能の人・日の戯れ (新潮文庫)

伝説的漫画家に祭り上げられてしまった著者の代表作である。「三丁目の夕日」のようなノスタルジーを漂わせながらも右肩上がりとは無縁の私小説的なストーリーにも惹かれるが、背景に描かれた風景がとりわけ印象に残る。地方の古民家はもとより、街中の商店やどこにでもあった団地もたいへん味わい深く描かれている。

著者ほどシルエットを効果的に使う漫画家を他に私は知らない。今の漫画ではシルエットは「犯人」もしくは「これから登場する謎の人物」を示す記号として使われていることが多い気がする。今の漫画が「キャラクター」で成り立っているからだろうか。