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「普遍」が生まれるまで -「歴史の中の「新約聖書」」

歴史の中の『新約聖書』 (ちくま新書)

歴史の中の『新約聖書』 (ちくま新書)

新約聖書がなぜ誕生したのか、なぜイエスの伝記である福音書が4つも収められているのかといったことを丁寧に解説している本である。キリスト教は日本の神道ユダヤ教と比較して「普遍的」であることが大きな特徴だが、その理由もキリスト教の母体であるユダヤ教の誕生から追って丁寧に紹介されている。

著者によれば福音書にはそれぞれ特色があるという。マルコ福音書は「聖霊主義」で神はイエス以外は救わない(!)一方、マタイ福音書は「半聖霊主義」で律法志向が強いという。ルカ福音書は「人による人の支配」を志向していて今のキリスト教の主流に近いこと、ヨハネ福音書は「イエス中心主義」で優越感ゲームが好きな人がハマりやすいそうだ。

新約聖書といえばついつい「はじめに言葉ありき」「貧しいものは幸い」で何となく理解したつもりになってしまうが、そんな理解は誤解にしかならないということがよく分かる良書である。