文を敲く

読書記録とその他雑記。

濃密 - 「リヴィエラを撃て(上)」

リヴィエラを撃て〈上〉 (新潮文庫)

リヴィエラを撃て〈上〉 (新潮文庫)

あらすじだけ読めばスパイの諜報劇を描いたエンターテイメント小説のように思えるかもしれない。しかし本書は単なるエンターテイメントには留まらない。アクションだけではなく人物や情景までもが濃密に描写されているのだ。安心の高村薫というべきか。しかも改行も少なく、文字が小さいので濃密さが際立っている。

本書の主人公はIRAのテロリストである。IRAはもはや日本人の意識からは忘れ去られつつあるが、彼らのような集団は「イスラム国」をはじめとして世界中で健在だ。過去の話ではあるが、現在にも繋がるテーマなのだ。