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読書記録とその他雑記。

波乱は続く -「寒村自伝 下巻」

前日紹介した寒村自伝の下巻である。

本巻の見所はなんと言ってもソビエト連邦旅行記だろう。上海から鉄道でソ連との国境へ向かい、シベリア鉄道でモスクワへと向かう。ソ連での旅行といえば何かと不便を強いられるイメージが強いが、寒村は「同志」なので何かと厚遇されていて興味深い。もちろん旅行中も面白エピソードに事欠かないので笑わずにはいられない。

もっとも笑い話だけで済むはずがなく、その後は関東大震災、同志との対立、投獄、妻や知人の死と重苦しい話も続く。それでも社会主義の理想を追い求める姿には畏敬の念を覚えずにはいられない。