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読書記録とその他雑記。

新しいオタクのために - 「オタク的想像力のリミット」

オタク的想像力のリミット: <歴史・空間・交流>から問う (単行本)

オタク的想像力のリミット: <歴史・空間・交流>から問う (単行本)

本書はアメリカで出版された"Fandom Unbound: Otaku Culture in a Connected World"というオタクがテーマの論文集の日本語版だとみられる。もっとも中身には「動物化するポストモダン」や「嗤う日本のナショナリズム」の抄録も含まれていたりするので、逆輸入版といってもいいかもしれない。

オタク論を著者たちと共に追い続けた読者にとっては新鮮さの無い本に思えるかもしれない。だが今改めて読むと2ちゃんねるもアキバも10年間で大きく変わってしまったことを意識せざるを得なくなる。どちらも大衆化してしまったのだ。

また、本書を読みオタク文化を論じる言葉はそれほどアップデートされなかったことにも気がつく(今は卓抜な論評を書けばたちまち新進気鋭の評論家になれるチャンスかも)。

オタクをテーマにレポートか卒論でも書いてみようと思っている文系の学生のために、教員が入門書として薦めるには最適だろう。