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ノブレス・オブリージュ - 「大原孫三郎」

大原孫三郎―善意と戦略の経営者 (中公新書)

大原孫三郎―善意と戦略の経営者 (中公新書)

遊蕩三昧だった倉敷の大地主の息子が日本有数の実業家になるまでを読み解いた評伝である。彼が今も語り継がれるのは大原美術館や研究所の創設など先駆的な社会貢献活動があるからだと思っていたが、経営者としても優れていたことを本書で知る。同時期に活躍した渋沢敬三武藤山治*1との比較検討が興味深い。

ちなみに大原美術館と共に瀬戸内を代表する美術館といえば地中美術館だが、その地中美術館を創設したのは岡山県発祥のベネッセだ。大原孫三郎を意識してのことに違いない。そう思って調べてみたところ創業者や現会長も彼に心酔していたことが分かり、影響力の大きさを感じずにはいられない。

*1:鐘淵紡績(カネボウ)の経営者。大原孫三郎が経営していた倉敷紡績の同業者である。なお当時のカネボウは日本を代表する巨大企業であった。神戸の旧武藤山治邸が昔日の栄華を偲ばせる。