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ネトウヨ必読本 - 「「靖国」という悩み」

なぜ靖国神社への参拝が政治問題になるのか、靖国神社の問題点とは何かがよく分かる本である。靖国神社への政治家の参拝は単純な政教分離の問題ではない。A級戦犯という非戦死者を合祀したことで慰霊施設から「戦後民主主義」を否定する施設へと変質したことにそもそもの根源的な問題があるのだ。*1

そして付属施設の遊就館歴史認識は「日本軍のおかげでインドネシアは欧米の植民地支配から脱却し独立することが出来た」「日本はルーズベルトの陰謀によって太平洋戦争に巻き込まれた」といった程度のものでありその問題点も指摘されている。文庫本も発売されているのでネット右翼や国会議員は本書を一度読むべきだろう。

靖国問題は本書に描かれた当時と比べればいくらか沈静化したが、問題点は克服するどころか積極的に肯定する方向へと向かいつつある。その結果隣国との外交はボロボロ、ヘイトスピーチが街頭に吐き出され、デモとテロと同一視する政治家まで現れたのではないかと私は思う。

(追記)そして2013年12月26日に安倍総理は電撃的に靖国に参拝して「公約」を実現した。年明けが思いやられる。

*1:追記:靖国神社の基本的に天皇大日本帝國)のために戦死した「英霊」を祀る神社だ。そのため明治維新の立役者でありながら最期に「朝敵」となった西郷隆盛は祀られていない。A級戦犯は敗戦によりGHQによる占領を招き天皇制を揺るがしたという点で「朝敵」といえるので合祀の対象としてふさわしくないともいえる。