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読書記録とその他雑記。

キラキラネーム - 「さようなら、ギャングたち」

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)

キラキラネームやDQNネームと呼ばれる珍妙な名前が流行る昨今だが、本書の主人公の名前には負けるだろう。主人公の名前は「さようなら、ギャングたち」で恋人の名は「S・B(ソング・ブック)」なのだ。ハイレベルな暗喩がひたすら続くため、人によっては意味不明に思えるかもしれない。でもこの詩的でハイレベルな暗喩こそがこの物語の醍醐味だと思う。

主人公はアイデンティティを去勢されている。だからなのか、不条理な状況もそのまま受け入れてしまう。カフカの「城」の主人公Kなら、憤慨して延々と自己主張を続けるだろう。

高橋源一郎池澤夏樹とよく似たポジションにいる作家のように思える。文学的評価は高いが、部数は伴わない。ただし、池澤夏樹は文壇サラブレッドなので全く同じとは言えない。