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溜息が出るサイエンスファンタジー - 「夜の神話」

夜の神話

夜の神話

夜の神話 (講談社文庫)

夜の神話 (講談社文庫)

冒頭は「となりのトトロ」的な感じがする。都会生まれの少年が田舎に引っ越してきて、鎮守の森で不思議な経験をする。しかしそれから先は怒涛の展開だ。少年の父親が勤めている原子力発電所で事故が起きてしまうのだ。少年は不思議な力で爆発をくい止めようと原発へと向かう。原子力発電所での事故の様子は克明でリアルだ。迫るメルトダウンへの恐怖、頼りない本社までしっかり描かれている。この本が出版されたのはちょうど20年前の1993年ということにも驚かざるを得ない。

残念なことに作者の危惧は現実化してしまい、一線を越えてしまった。原発に頼り続けることはもはや不可能だが、放射性廃棄物の最終処分は先送りされたままだ。「トイレなきマンション」にいつまで住み続けることが出来るだろうか。