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新しい世界、新世界 - 「通天閣 新・日本資本主義発達史」

通天閣 新・日本資本主義発達史

通天閣 新・日本資本主義発達史

辞書かと勘違いされる分厚さ。700ページ以上ある。それだけの枚数を費やして何が描かれているか。大阪でかつて暗躍し、そして忘却された人々の記録。そして「新世界」という世界について語られている。

本書ではほとんど言及されなかった現在の新世界も面白いと言えば面白い。通天閣の南側にはチェーン店系居酒屋を思わせる店構えの串カツ屋が並び、呼子たちが手ぐすね引いて待ち構える。ハリボテの街になりつつあるのかもしれない。

かつて新世界が出来たころ、ルナパークという遊園地があったという。それは早々に潰れた。そして20世紀の終わりにフェスティバルゲートという遊園地が作られた。やはりあっけなく潰れ、つい最近まで不自然に綺麗な廃墟として残っていた。歴史は繰り返される。あの呪われた駅前一等地ともいうべき空き地に次は何が出来るのだろうか。

――私はスパワールドの別館を作ることが一番無難な選択肢であると思う。

(2015.2.1追記)
結局フェスティバルゲートの跡地にはマルハンドン・キホーテがオープンした。毀誉褒貶の度合いが激しい両社の揃い踏みという結果となったことは興味深い。ちなみに新世界の最寄り駅は「新今宮」駅と「動物園前」駅である。どちらの駅も新世界が誕生した後に作られている。そのとき抜群の知名度を誇る「新世界」どころか実際の地名が使われなかったことは、よくよく考えてみればただ事ではない。固有名詞が隠蔽されているのだ。