文を敲く

読書記録とその他雑記。

2010年代の台湾 -「台湾の若者を知りたい」

2010年代の台湾の学生生活が主に記された本である。学校制度や生活スタイルの違いなどが詳しく紹介されていて面白く読むことが出来た。

一番驚きだったのがある学校のクラス目標に「(LINEのクラス連絡用グループは)既読スルーはしない」というものがあると紹介されていたことだ。先日台湾旅行した時に、なんとなく現地の放送を見ていたらLINEのCMがそこそこ流れていて感嘆したが、まさかここまで普及しているとは思いもしなかった。

本書には「影」の部分はほとんど書かれていないが、一部の学生は辛い学生生活を送っているであろうことは想像に難くない。

ポリティカル・コレクトレス - 「異セカイ系」

現代(2010年代後半)が舞台のようではあるが「セカイ系」だからか折々に散りばめられたキーワードや道具立てに懐かしさを感じる。ただしキーワードが分からなければあまり楽しめないハイコンテクストなメタフィクションである。

本作の主人公は自作小説に転生してから、なぜかポリティカル・コレクトレスな態度を取り始める。この態度もひとつの伏線であったとはいえ、同じメタフィクションでも四半世紀前に出版された筒井康隆の「朝のガスパール」などとは隔世の感がある。

「作者と登場人物の恋愛は可能か」という問題に対する作者が提示した解決策は私の意表を突いたもので、その手があったかと感嘆した。

裁判所訪問記

日本国憲法第82条が遵守されていることを確認するため裁判所を訪れる。入口でセキュリティチェックを受けた後、設置された開廷リストを参考に法廷へ。被告人及び弁護士は既にスタンバイしていた。しばらくして検察官が入廷し、風呂敷包みを解き大量の証拠書類をサッと取り出す。私にとって風呂敷は中元と歳暮の広告中のみに存在する非日常的な記号であったので、何とも新鮮な感覚を覚える。

裁判長が入場する頃には傍聴席は満員御礼となる。夏休みゆえか未成年者および同伴の保護者も散見された。裁判は型通りに行われる。検事は原稿から片時も目を離さずに黙々と起訴理由を読み上げる。被告人は罪を全面的に認めていたため特に大きな波乱もなく裁判は進行する。

裁判長が「退廷」を命じるのは不規則発言を繰り返す被告人や叫びだす傍聴人が現れたときだけに使う伝家の宝刀的なものだと思い込んでいたが、実際には結構「退廷」を命じていた。傍聴人がつめかけて傍聴席が満席になると、立ち見の傍聴人には退廷が命じられるのである。

まだまだ知らないことは多いものだと思った一日であった。