文を敲く

読書記録とその他雑記。

ポリティカル・コレクトレス - 「異セカイ系」

現代(2010年代後半)が舞台のようではあるが「セカイ系」だからか折々に散りばめられたキーワードや道具立てに懐かしさを感じる。ただしキーワードが分からなければあまり楽しめないハイコンテクストなメタフィクションである。

本作の主人公は自作小説に転生してから、なぜかポリティカル・コレクトレスな態度を取り始める。この態度もひとつの伏線であったとはいえ、同じメタフィクションでも四半世紀前に出版された筒井康隆の「朝のガスパール」などとは隔世の感がある。

「作者と登場人物の恋愛は可能か」という問題に対する作者が提示した解決策は私の意表を突いたもので、その手があったかと感嘆した。