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読書記録とその他雑記。

読み切り - 「古道具 中野商店」

古道具 中野商店 (新潮文庫)

古道具 中野商店 (新潮文庫)

文庫本の裏表紙に書かれた「あらすじ」だけ読むと、メディアワークス文庫あたりで刊行されていそうな小説のように思えるかもしれない。しかし著者は芥川賞選考委員も務める純文学のベテラン。だから類書とは一線を画している。たとえば、本文書体に精興社書体を選んでいるところにもこだわりを感じる。

類書であればシリーズ化できるよう伏線を貼ったりしているが、本書にはこの一冊で完結させようとする意志を感じた*1。もし新潮社ではなくメディアワークス文庫から書下ろしで出していたらシリーズ化してさらに5冊ぐらい刊行されたに違いない。

*1:『新潮』に2000年から2005年まで断続的に掲載していたということが大きいのだろう。気長に書かれている。