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読書記録とその他雑記。

望まれるカリフ - 「ヴァチカンの正体」

フリーメーソンなどの陰謀系を期待している人には期待外れになるだろう。本書はハリウッドをしのぐ世界最強のメディアコングロマリットとしてのヴァチカンに光を当てているからだ。メディア論には以前から親しんでいたので違和感なく最後まで読み通すことができた。

本書の中でとりわけ面白かったのは「なぜ英王室の美術品はぱっとしないのか」という謎に迫る第4章だ。美術品の宝庫であるヴァチカンとの対比が興味深い。文化に対して冷淡な橋下徹大阪市長ヒトラーではなくクロムウェルに例えたところにはニヤリとさせられた。

ヴァチカンとローマ法王の影響力は絶大だ。キリスト教世界だけにとどまらない力を持っている。その様子を見ていたらイスラームでカリフ制復活が望まれるようになることはごくごく当然なことだと思う。