文を敲く

読書記録とその他雑記。

記憶 -「書庫を建てる」

大学教授が懇意の建築家と共に蔵書を収める書庫を完成させる過程を綴った本である。口絵には完成した書庫の写真が載せられているが、この写真を見ているだけでもうっとりとしてしまう。余るほどの金があればこのような書庫を建てたいと思わずにはいられない。

また書庫を建てるきっかけとなった大学教授の家族の話も興味深い。祖父は一代で財を成したが、相続税やらの問題でこの教授の代で実家は手放すことになる。ふと「売り家と唐様で書く三代目」という川柳を連想する。たとえ道楽息子でなくとも財産を維持して次代へと継承するのは並大抵のことではないのだ。

なお本書は松原隆一郎氏と堀部安嗣氏の文章が交互に収められ、同じ出来事をそれぞれの立場から知ることが出来る。話が重複するので人によっては読み辛くに思えるかもしれない。