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モラトリアム賛歌 - 「四畳半王国見聞録」

四畳半王国見聞録 (新潮文庫)

四畳半王国見聞録 (新潮文庫)

「四畳半」に住まう京都の大学生の妄想と奇妙な生態を綴った短編集。「詭弁論部」など訳の分からない有象無象の集団やサークル、そして学生たち。単位を捨て街を出歩き、清談に花を咲かせ、青春を浪費するモラトリアム賛歌が綴られていると言ってよいだろう。

このモラトリアムを謳歌する学生から遠い所にいるのがいわゆる「意識の高い学生」なのだろう。彼らは留学、ボランティア、インターン、就活など何事にも熱心で功利的ともいえる。本書にはこの種の学生は登場しないので、ひとときの現実逃避には最適だ。