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知的滑稽本 - 「本にだって雄と雌があります」

本にだって雄と雌があります

本にだって雄と雌があります

いきなり「本にだって雄と雌があります」と始まり本と本が交わって「幻書」なる本を生むという奇天烈な話から始まる。その後「幻書」をめぐる話が饒舌に続き、物語が展開されるのだが、語り手の祖先から語り始めるところは「トリストラム・シャンディ」的だ。いや、ひたすらギャグを詰め込んであちらこちらへと脱線しているのは「トリストラム・シャンディ」そのものなのかもしれない。

家族の歴史を語る手紙という体裁は「同時代ゲーム」あたりか、幻書はボルヘスあたりかとあれこれ考えてしまいたくなる。オマージュ満載なのである。とはいえ呑気な物語かと言えばまったくそんなことは無く、物語の軸となる「語り手の祖父」は太平洋戦争でボルネオに送り込まれ死地を彷徨うなど波乱万丈だ。意外に重々しい。ともかく、私も幻書が欲しい。