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読書記録とその他雑記。

見合小説 - 「細雪」

細雪 (上) (新潮文庫)

細雪 (上) (新潮文庫)

細雪 (中) (新潮文庫)

細雪 (中) (新潮文庫)

細雪 (下) (新潮文庫)

細雪 (下) (新潮文庫)

阪神間を舞台に四姉妹の優雅な生活に目が行きがちだが、本作は「お見合い」を主題とした見合小説だ。今風に言えば「見た目女学生ホントは三十路の雪子とその姉妹が繰り広げるドタバタ婚活小説」といったところだろうか。恋愛小説は掃いて捨てるほど出版され続けるが、見合小説を見かけることは少ない。仲人を立てる伝統的な見合が少なくなったからか、話がドラマチックな展開にならないからか。

こいさんの妙子は洪水に巻き込まれたり恋人との別れありと劇的で目が離せず、家や格式に引きずられ、見合の神経質的な駆け引きに翻弄される幸子の姿は喜劇的でもある。「無口だけど芯は強い」雪子は「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門有希のような雰囲気。