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読書記録とその他雑記。

タレント本の寿命 - 「窓ぎわのトットちゃん」

窓ぎわのトットちゃん (講談社文庫)

窓ぎわのトットちゃん (講談社文庫)

黒柳徹子の幼少期の自伝的小説。読んでいて「デイビッド・コパフィールド」のような剽軽な面白さを感じた。タレント本の大半はベストセラーとなってもいつの間にか忘れ去られてしまう。「KAGEROU」はまだ出版されてから数年しか経っていないはずなのにもうほとんど忘れられている。「窓ぎわのトットちゃん」のように読み継がれるタレント本が一体どれほどあるだろうか。

本書の舞台となった「トモエ学園」はある意味では究極の「ゆとり教育」を行っていたように思える。管理教育や詰め込み教育の対極に位置していることは確かだ。だから自分の受けてきた教育や現在行われている教育について多少なりとも考えずにはいられなくなる。果たして「ホームレス中学生」を読んだ人間のうち何人くらいが貧困問題について想いを巡らせただろうか。単なる娯楽に留まらないからこそ、「窓ぎわのトットちゃん」は読まれ続けるのだと思う。