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読書記録とその他雑記。

あらすじだけ読めば - 「アーサー王宮廷のヤンキー」

コネチカット生まれのちゃきちゃきのヤンキー、ハンクが昏倒から目を覚ますと、そこは中世円卓の騎士たちの時代だった!科学の知識で、魔術師マーリンに対抗し、石鹸や煙草作りに始まり、ついには新聞や電話網まで整備して、次第にお人好しのアーサー王の側近として地位を固めていくが…。」

というあらすじを読んだだけでは「小説家になろう」によくある転生ものの小説のように思えるかもしれない。しかし本作が出版されたのは1889年だ。その事実にまず驚く。

主人公の内政はいかにもアメリカ人的で笑える。騎士に広告看板を掛けさせて石鹸のセールスマンに仕立て上げたり、カトリック教会の政治的影響力を無くすためあれこれ手を尽くそうとする。しかし読み進めていくと現代社会への痛烈な風刺の度合いが強まってゆき、呑気には読めなくなってゆく。読後感はほろ苦い。