文を敲く

読書記録とその他雑記。

「海賊と呼ばれた男」の読みやすさ

海賊とよばれた男 上

海賊とよばれた男 上

海賊とよばれた男 下

海賊とよばれた男 下

本屋大賞を受賞した話題作。上下各三時間、一日で読了した。ページ数は相当あるが何故これだけ早く読み終えたのか少し不思議である。そこでいくつか仮説を立てて検討してみることにする。

仮説1:凝った表現が少ないから

純文学で日常ではあまり使われない形容詞や言い回しなどが頻出するが、本書にはその種の面倒な文学的表現は使われていない。また司馬遼太郎のように余談へと大きく脱線することもない。凝り固まったトリックや伏線もない。作者と主人公の熱いメッセージがあるだけだ。

仮説2:「影」が無いから

作者と主人公の熱いメッセージがあるのみで、エピソードから主人公の「影」ともいうべきものが欠落してしまっている。そのため「考えながら読む」という作業から逃れやすかったのかもしれない。

仮説3:あらすじを知っているから

既に広告や書評などで内容や見所が広く紹介されている。そのため本を読むことが単なる「書評の確認作業」になり無意識のうちに読み飛ばしている可能性は高い。