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読書記録とその他雑記。

先行研究批判 - 「初詣の社会史」

「初詣」が明治時代に生まれた理由から国民的行事として知識人にまで広く受容されていくまでの経緯を考察した労作である。「初詣」が鉄道会社の宣伝活動によって普及したことは以前から耳にしてはいたが、私鉄に限らず国鉄も初詣の宣伝に積極的だったという指摘などもあり興味深く読めた。

また著者は日本社会の近代化過程において鉄道会社が果たした役割の再検討も促している。脚注では『「民都」大阪対「帝都」東京』の問題点が批判されていて嗚呼やはり槍玉に挙げられていたかと思わずにいられなかった。「初詣」と銘打たれてはいるが今後の日本鉄道史研究にも一石を投じる内容だといえよう。