文を敲く

読書記録とその他雑記。

昔の情緒 - 「陰翳礼讃 東京をおもう」

文庫版ではなく中公クラシックス版を選んだのは「陰翳礼讃」以外の評論も読んでみたかったからだ。谷崎は東京出身だったが震災後阪神間に移住し、そのままついに東京には帰ることが無かった。本書を読めばその理由がよくわかる。かつての情緒を失いバラックと安普請ばかりが立ち並ぶ東京が嫌で仕方が無かったのだ。

一見すると「昔はよかった」で彩られた評論だが、浄瑠璃に対しては手厳しく批判していたりするので面白い。