文を敲く

読書記録とその他雑記。

再評価の愉しみ -「エンドレスエイトの驚愕」

およそ10年前に放映されたアニメで起きた「事件」を分析哲学のアプローチで再評価する野心的な本である。事件発生当時も様々な考察が飛び交っていたが、本書はそれらの考察も丁寧に検討して作品が抱えてしまった問題点を子細に分析して「対案」まで記述する。文章の熱量もさることながら推理の面白さも抜群である。

エンドレスエイト」が唐突に繰り出したループを体感することは、本来、オタクというモラトリアム志向体質の人種にとっては居心地の良いことであるはずだった。(中略)しかし多くのオタクは、「早くストーリーを進めてくれ!」と絶叫した。(p.55)

オタク生活は根底においては、リア充生活に代わるものではなく、リア充人生の希薄化コピーにすぎなかったらしいのだ。(p.55)

作品を鑑賞していたオタクにとって痛い点まで的確についてくる。当該作品にそれなりに思い入れがある*1ことも大きいが、本書を2018年のベスト本に選びたい。

*1:当該アニメ自体は鑑賞していないが多方面で影響を受けている