ブラックジョーク - 「帰ってきたヒトラー」

帰ってきたヒトラー　上 （河出文庫） [ ティムール・ヴェルメシュ ]

帰ってきたヒトラー　下 （河出文庫） [ ティムール・ヴェルメシュ ]

上手い具合に話が転がっていくので「ナチス総統が異世界転生でコメディアンになったら」といった題で書かれた異世界転生小説といってもいいかもしれない。転生小説は作者の願望充足の面が強い場合が少なくないが、本書はその要素の代わりに痛烈な風刺や細かいギャグが溢れている。

たとえば、政党に関しては右も左も問わず実在の名称でネタにされている。たぶんドイツの事情に詳しければもっと楽しんで読めたのだろうとは思わずにはいられなかった。二番煎じを狙った本を出すなら「帰ってきた東条英機」あたりになるのだろうが、あまり面白くなさそうだ。