文を敲く

読書記録とその他雑記。

受容史 - 「過去は死なない」

本書はメディアが「歴史」をいかに形成(あるいは抹殺*1)してきたかを分析したものである。小説・写真・漫画といった各メディアの特性ごとにそれぞれ分析されている。個人的には「ゴーマニズム宣言」によくみられた表現とソビエト連邦プロパガンダポスターとの類似性の指摘などを面白く読めた。

著者によれば、歴史小説は小説が書かれた時代のおよそ半世紀前に設定されていることが多いという。「歴史」が主題となっている日本のベストセラー小説でもおおむねその傾向は当てはまっているようだ。この仮説が正しければ、今は1960年代を回顧した小説が書かれるべき時期に入ったといえるだろう*2

ベストセラーの出版時期と舞台となった時代

*1:著者の定義による。卑近な言葉でいえば「歴史修正主義」といったところだろうか

*2:アメリカであれば「公民権運動」と「ベトナム戦争」を回顧する大河小説となるだろう。日本であれば「高度経済成長期」だが今の調子では2020年以降になりそうだ。