文を敲く

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断片から見出す -「断片的なものの社会学」

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

社会学者である著者が綴ったエッセーである。社会調査を行っているときに出会った「学問」として扱うには難しいが印象的な出来事やインタビューが主に書き留められている。一例をあげると「下町の家の前の鉢植え」や「放置されたブログ」といったものがある。専門用語をほとんど交えることなく綴られた繊細な文章だったのでゆっくりと味わいながら読むことができた。

本書は2010年代の売れっ子社会学者(自称)が書く文章の対極に位置する。だからこそ「新潮」の編集者は著者の小説を雑誌に載せようと思ったのだろう、きっと。