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読書記録とその他雑記。

沼 -「ニュータウンは黄昏れて」

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

バブル絶頂期にうっかりニュータウンの分譲マンションを購入してしまった家庭の「その後」の物語である。いまだにローンを抱えているのに資産価値は既に大きく下回る。都内にでも引越ししたいが売りたくとも売れない。そんな悩みを抱えながらも「母」は管理組合の役員としてそれなりに奮闘し、「娘」は結婚による「脱出」を試みる。作中における「父」の不在は何となく気になるものがある。

それぞれが不満やわだかまりを抱えたまま物語は幕を下ろす。今はニュータウンだけだが、日本の人口減少傾向に歯止めがかからない限りは都心であれどこの問題からは逃れることは難しいとは思う。