文を敲く

読書記録とその他雑記。

変わらない -「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

舞台は21世紀のはずだけれども、おそらく言葉を少し入れかえれば1980年代でも通用する感じがした。自己言及がないからだ。現代日本が舞台なら主人公たちが「なんだか村上春樹の小説みたいなことになってしまったな」「やれやれ」といった会話をしているほうが自然だろう。

大筋のところでは初期の作品としていることは変わりがない。これまで無かった「仲良し5人組」というものにちょっと新味があるものの主題はやはり「喪失」なのである。主人公が事あるごとにセックスするようなことは無いが、それでも物語の重要な所ではきちんとセックスしている。