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古びない - 「丸山眞男セレクション」

丸山眞男セレクション (平凡社ライブラリー ま 18-1)

丸山眞男セレクション (平凡社ライブラリー ま 18-1)

「現実脱出論」という本を読んだばかりなので、本書に収録された『「現実」主義の陥穽』がとりわけ印象に残った。さすが戦後日本を代表する思想家だけあって文書も論考も整然としている。

現実とはこの国では既成事実と等置されます。現実的たれということは、既成事実に屈服せよということにはかなりません。現実が所与性と過去性においてだけ捉えられるとき、それは容易に諦観に転化します。「現実だから仕方がない」というふうに、現実はいつも「仕方のない」過去なのです。(「丸山眞男セレクション」P.247より)

この論考が発表されたのは1952年であるという。半世紀以上前のことだ。だが全く古さを感じさせない。21世紀も15年経とうかとする今でも「現実的ではない」「非現実的」「現実を直視せよ」「現実的たれ」といった批判が世間一般に流通し、好評を博しているためである。古さを感じさせないことに危機感を持たなければならない。