文を敲く

読書記録とその他雑記。

現代をえぐる一冊 - 「ポストモダンの共産主義」

現代グローバル資本主義の何たるかを鮮やかに切り取った本である。そして現代日本の病理は日本固有のものではなく諸外国とも共振していることがよく分かる本である。「資本家が好むモットーは、社会的責任と感謝の念である*1」「最高権力者でありながら、行動がどんどん恥知らずになっていく*2」など心に留めておきたい文章がふんだんに載っている。

ただラカンなどの議論が説明なしに引用されているので、よく分からないまま読み進めてしまった部分が少なくない。しかし本書の密度はきわめて高いので、飛ばし読みでも下手な新書よりも現代社会についての知識と理解が深まる。

*1:ちなみに「ありがとう」の収集はワタミに限らずスタバでも行われている。もし21世紀に「ドラゴンボール」の連載が開始されていたら、主人公が敵を攻撃するときに集めるのは「元気」ではなく「ありがとう」になっていたかもしれない。

*2:著者はベルルスコーニについて述べているが、安倍首相と愉快な仲間たちを連想せずにはいられない。彼らは「ナチス」ではなく「ベルルスコーニ」を目指しているのだ。